「盲目の理髪師(ビクトリア号怪事件)」〜 ジョン・ディクスン・カー著 フェル博士(4)
[A] 「Kindle (含むUnlimited)」で読むJDC 〜 超ミニあらすじ〜多少、文章は時間軸も含めアレンジしております (「Kindle Unlimited版」がありましたので順番前後いたしました )
(本作の舞台)「盲目の理髪師」 〜 フェル博士(4) : [本作の舞台は、豪華客船『クィーン・ヴィクトリア号』の中、もう1つは『エイデルフィ台町1番地』の新居に移ったフェル博士夫妻の自宅です]
①-1 豪華客船『クィーン・ヴィクトリア号』は、NYと英国サウサンプトンや仏国シェルブールと結ぶ定期船で、今回は特別に船内で、今や各地で高い人気の 「フォータンブラ」氏とその助手「アブドゥル」による『(大掛かりな)人形劇、つまりマリオネット』が開かれほぼ乗客全員の期待と興奮も徐々に高まりつつあった。船内は食事の準備ができたと『ドラ』も鳴る。
①-2 船は昼間は太陽の光を受けながら白い波をかきわけ、夜は月と星を夜空と海面に反映しつつ、時に静かに、時に嵐のような大荒れの中を高まり低まり、しかしその航路は晴れの時も雨の時も順調に進んでいた。あの電報が届くまでは。あの時、無線通信士「スパークス」は大急ぎで「船長 ヘクター・ホィッスラー」を呼ぶ。その時、領事館勤務の「カーティス(カート)・ウォーレン」も偶然その通信室に来ていたのだ。他にも数人が電報を取りに来たり発信しにきていた。
①-3 そして、食事のテーブルがカート(カーティス)と同じだった縁でデッキ・チェアーでくつろぐ3人。フォータンブラ氏の姪(めい)で人形劇の際には色々とその裏方もこなす「ペギー・グレン」、『剣の八』にも妻「マデリン」とともに登場していて事件解決に寄与しフェル博士とも懇意なミステリー小説作家「ヘンリー・モーガン」、そして、その堂々とした『スカンディナヴィアの親分』とも呼ぶべき貫禄(かんろく)のノルウェー人の元船長「トマッセン・ヴァルヴィック」だ。彼らは、さきほど無線室から急ぎ自分の船室に戻ったカーティス(カート)のもとへ向かう。そしてカートの様子から『大変な難題(なんだい)』と『血』と『奇妙な事件』に豪華客船さえも宇宙を回っていると思うほど足もとが、いや、頭の中が揺れだしたのを感じることになる。
①-4 彼らの問題の1つめは、素人映画撮影を趣味としているカート(カーティス)の『ある持ち物』が何者かに盗まれてしまったことだった。この『ある持ち物』にはカートの伯父「政界の大立者で実力者 ウォーパス」にとっての一大事が含まれている可能性があり「執事 ヒラー」も心配している、と、さきほどの電報は告げる。彼らは船室を飛び出した。
①-5 この時、もう1つの問題が裏で静かに進んでいた。急を告げる電報はもう1つあって、NYPDから来ており、それは『ステリー事件(ワシントンで起きた、イギリス大使夫人のネックレス鑑定士がからむ)事件』の容疑者が、こともあろうか、この『クィーン・ヴィクトリア号』に乗船しているらしいと。そしてその電報はさらに『その人物についての重要な情報』も船長に知らせているのだった。
①-6 ちょうどその頃、ホィッスラー船長は「スタートン子爵(卿)」に怒鳴(どな)られていた。『どこだっ?』。彼は『船長の預かり証』を彼の目の前でヒラヒラさせてみせた。しばらく前から『運命』が繰り出すパンチがあまりに強くて、進退極まった船長は涙目となった。(これは、困った。そうなのだ。対応には十分気をつけるべき大物スタートン卿の『ある物』は嵐の甲板で消えてしまったのだ・・・このワシの手から奪われてな。ゾゥーッとするわい!)。
①-7 地下の船倉に閉じ込められていた「新発明・殺虫剤スプレーのセールスマン チャールズ・ウッドコック」は『あの男を見た』と吠(ほ)えた。著名な「脳の専門医 オリヴァ・ハリスン・カイル博士」がバーの中では酔って立ちあがっていた。「美学者のレスリー・ペリゴールと妻のシンシア」は『ある場所を200回もグルグル』と回る。人気のプロボクサー『バーモンジーの恐怖』は真っ暗闇の中にすばやくパンチをくりだした。手応えは十分で誰かが倒れる音がした。姪のペギーに強く叱られたのに、彼女のジュール伯父ことフォータンブラは糸に脚をとられたふりをしてバーへと向かっていた。助手のアブドゥルもどこかへ行ってしまう。
①-8 そんなこんなで船中大騒ぎになりつつある中、スタートン卿の船室に入ったモーガンたちが「どうした?」とたずねる。ペギーはなぐさめようと船長の肩をたたく。元船長ヴァルヴィックはしっかりしろとにらむ。スタートン卿は女性秘書「ミス・ヒルダ・ケラー」と下を向いてゾウのように耳をふさいでいる。(なんてこった!) しかし彼らは思い出していた。あの真っ暗な中ある女性が、まるで糸に引かれたように、闇に向かって・・・。
[B] 本作の主な登場人物 (書籍によっては、登場人物の名前に多少の違いがあることもあります) (採番②と③)
以下、おおまかな登場シーン別くらいにグループ分しておりますが、あまり深い意味はありません
[NYとサウサンプトンやシェルブール間を航海する豪華客船クィーン・ヴィクトリア号の関係者]
②-1 クィーン・ヴィクトリア号の船長 : ヘクター・ホィッスラー
②-50 二等航海士 : ボールドウィン
②-51 無線通信士(いとこは『バーモンジーの恐怖』ことアリック) : スパークス
②-52 (一等水兵や船医やその他の乗組員)
(以下、船客たち)
②-2 素人映画を作ることが趣味の領事館勤務の外交官 : カーティス(カート)・ウォーレン
②-3 モーガンが密かに『スカンディナヴィアの親分』とも呼ぶ,ノルウェー人の元船長 : (キャプテン・)トマッセン・ヴァルヴィック
②-4 操り人形師(マリオネット)のフォータンブラ(または、ジュール伯父)の姪(めい) : ペギー・グレン
②-5 『剣の八』に妻「マデリン」とともに登場し事件解決に寄与する、フェル博士とも懇意なミステリー小説作家(本作ではマデリンは名前は出てくるが登場しない) : ヘンリー・モーガン
②-6 殺人事件の公判に精神鑑定などでも呼ばれる、著名な脳の専門医 : オリヴァ・ハリスン・カイル博士
②-7 フォータンブラを高評価した、美学者(美の本質などを論理的に、また、哲学・形而上学的に探究する学問)にして、事物の比較評価もする学者) : レスリー・ペリゴール
②-8 その妻(ペリゴール夫人) : シンシア
②-9 高価な『エルラルドの象』を所持するウォーパスも懇意という大富豪 : スタートン子爵(卿)
②-10 その女性秘書 : ミス・ヒルダ・ケラー
②-11 ウォーレンに対して、不審な人物は『変な形の耳、口ひげはなく、ほおにイチゴみたいなアザがある』などと話す(事件の目撃者か?)、政界の推薦者が欲しい新発明の殺虫剤スプレーのセールスマン : チャールズ・ウッドコック
②-12 無線通信士スパークスのいとこでパンチも強烈な『バーモンジーの恐怖』と呼ばれる人気のプロボクサー : アリック
②-13 ペギー・グレンの伯父で、最近、非常に人気の『(人間ぐらいの重さの人形と大きな仕掛けを使う)操り人形師(マリオネット)』 : フォータンブラ(または、ジュール伯父)
②-14 フォータンブラの助手 : アブドゥル
(以下、乗船客ではないが重要な登場人物たち)
③-1 『政界の魔術師』とも呼ばれる、カーティス(カート)・ウォーレンの伯父で、政界の大立者・実力者 : ウォーパス
③-2 ウォーパスの執事 : ヒラー
(以下、捜査関係者)
③-3 ワシントンで起きた『ステリー事件(イギリス大使夫人のネックレス鑑定士がからむ)』を追って、船長に『貴船に乗船している者の中に本人といつわっている重要容疑者がいる』打電するNYPD(ニューヨーク警視庁)総監 : アーノルド
③-4 同、巡査部長 : ベッツ
③-5 警部 : ジェニングス
③-6 部長刑事 : ハンパー
(夫人とともに新居『エイデルフィ台町1番地』の自宅にいる)
④-99 ギデオン・フェル博士
[C] 本作について
⑥-1 原題は「The Blind Barber」。目次は全部で22(つまり22章)からなっています。巻末には「宇野利泰(うの・としやす)氏」による、本作とジョン・ディクスン・カーの経歴についての簡単な『解説』がついています(ちなみに、宇野利泰(1909〜1997年)氏は翻訳者で、多くのエラリー・クイーンやジョン・ディクスン・カーものなどの訳があります)。
⑥-2 「盲目の理髪師 (The Blind Barber)」、ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr)著 ( グーテンベルグ21 井上一夫 訳) ちなみに、「グーテンベルグ21」はデジタル書店。
⑥-3 なお、創元推理文庫で「新訳版」が出ています。『盲目の理髪師【新訳版】 (創元推理文庫)、ジョン・ディクスン・カー 著、 三角和代訳』です。
[D] フェル博士シリーズ
⑦-1 ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr)」の人気作品には、いろいろな主人公(探偵役)が登場します。「アンリ・バンコラン(Henri Bencolin)予審判事」、「ギディオン・フェル(Gideon Fell)博士」、「警視総監直属D3課長マーチ大佐(Colonel March)、主に短編で登場」などです。事件が不可能犯罪や密室の場合は、時に「誰がやったか?」よりも「どのようにしてそれらがなされたか?」に重点が置かれる場合があります。
⑦-2 一方、別名義のカーター・ディクスン(Carter Dickson)で発表した作品では、「通称H・Mこと、ヘンリー・メリヴェール卿(Sir Henry Merrivale)」が主に活躍し、その彼が登場する長編第1作目は「プレーグ・コートの殺人(The Plague Court Murders)」ですが、こちらも人気の主人公です。このHMが主人公の場合も、フェル博士登場と同様に、事件が不可能犯罪や密室の場合は、時に「誰がやったか?」よりも「どのようにしてそれらがなされたか?」に重点が置かれる場合があります。
⑦-3 現在、このブログでは、『フェル博士』の作品の記事をまず順に続けております。その時点で「Kindle (含むUnlimited)」の本が出ていないなどの事情があれば、記事の枠だけ作ってスキップして次の作品に進み、後でKindle版が出てきた場合は、順番は後になりますが、いつか記事にする予定ではいます。別途、その際に新訳本などがあればそちらを読むこともあるかもしれません。
ではまた!