カーター・ディクスン(ジョン・ディクスン・カー)著 HM卿(16)
「青銅ランプの呪(The Curse of the Bronze Lamp)」 〜 kindle(含Unlimited)版で読む
[A] ネタバレなしの 超ミニあらすじ (多少、文章は時間軸も含めアレンジしておりますが)
(注)カーター・ディクスンはジョン・ディクスン・カーの別名義ですので、フェル博士に続いて、H・M(ヘンリー・メリヴェール)卿シリーズでお送りしています。
(物語は、カイロの高級ホテル『コンティネンタル・サボイ・ホテル』のスイートの部屋で『ある電話を待っている』男女2人の会話のところから始まり、そしてロンドンへと舞台は移ります)
①-1 4月27日木曜日、イギリスは冷たい雨が降っていた。『セヴァーン伯爵領4代の当主ジョン・ローリン(セヴァーン伯、Lord Severn)の屋敷(以下『セヴァーン館』)の執事「ベンスン」と家政婦の「ポンフレット夫人」は、お茶の休みを取っていた。そして2人は暖炉も暖かい『食器室』から玄関に向かって急いでいた。「ヘレン・ローリンお嬢様」の電報の知らせとすれちがうように、表門の門番「レナード」の前を1台の車が走り去っていったからだった。雨は降り通路で稲妻が走った。
①-2 クーペ型の青い色のライリ(ライレー、Riley)車が走っていた。ロンドンのホテルからハンドルを握ってきたのは青年弁護士「クリストファー(キット)・ファレル」、助手席にはヘレンが、そして車の持ち主でヘレンの友人の女性「オードリー・ヴェーン」は後部座席でスーツケースと一緒に揺れていた。チェスのコマの形や動物の形に刈り込んだ生垣(いけがき)を横目に、セヴァーン館の玄関が見えてきた。
①-3 ヘレンは、車が止まるやいなや飛び出して玄関の大きな扉を開けて中に入った。荷物を持っているせいもあって、やや遅れて、キットとオードリーの2人が入った。そこで彼らは何を見たか? 一方、ベンスンとポンフレット夫人は急いで廊下も通って緑色のラシャ張り(ビリヤード台などに使われている羊毛またはその織った布)の扉から大広間に入ってきた。
①-4 玄関の大広間の中央付近で、2組の男女が向き合って不思議な顔つきになって立ちすくんだ。キットとオードリーの前にはベンスンとポンフレット夫人がいた。キットは声を絞り出した「やあ、ベンスン! ヘレンはどこだ? 」。ベンソンは『ある物を2つ』は持っていたが、ヘレン自身あとかたもなく消えていた。(大変! あの予言が! ) キットは大声で叫(さけ)んだ「ヘレン〜!」・・・声はただ空中に消えて行ってしまった(そ、そんなバカなっ!) ポンフレット夫人は、そう言えばと、さっき通路を通る時いつものところにある『ある物』が消えていたと思い出した。
①-5 予兆はエジプトですでにあった。ヘレンの父親のセヴァーン伯と共同で発掘していた考古学者「ジルレー教授」がさそりに刺され・・・セヴァーン伯も体調は崩(くず)れ・・・セヴァーン伯の助手でヘレンと婚約中の「サンディ・ロバートスン」は、心配だからここに残ろうかと言うヘレンを無理に帰途につかせたのだった(ロンドンの骨董屋にもねんを入れて電話はしておいたが・・・おれは、何かまちがっていたのだろうか? )
①-6 さらに、ヘレンがロンドンに帰ろうとカイロの北にある『中央停車場』で、「H・M卿(ヘレンたちと同じ『コンティネンタル・サボイ・ホテル』に宿泊していた)」と新聞記者たちに囲まれて質問と写真攻めにあっていた、急行列車に乗り込もうと1番線のプラットフォームに立っていた。そして汽笛が鳴って、まさに急行列車に乗ろうとしたその時、『その青銅のランプを持ち帰ると・・・』と、そう警告した者がいた。近頃有名な「カイロの占い師(預言者) アリム・ベイ」と名乗る男である。
①-7 それでも、ヘレンはH・M卿と急行列車に乗り、飛行機に乗り、ロンドンからこうやって3人で車でセヴァーン館まで無事たどり着いたのだった。あんなに自信満々に! だが今、執事が手に持っているように、大広間に残っていたのは『ヘレンのグレーのレインコート』と『青銅のランプ』だけだった。ヘレンはどこに行ったんだ? キット・ファレルと オードリ・ヴェーンは同時に叫んだ! わあ〜! きゃ〜っ! ・・・! ふたたび雷が鳴った! やがて、ロンドン警視庁(スコットランド・ヤード)の主任警部「ハンフリー・マスターズ」に上から連絡が入った。「何ですって!? きっ、消えたっ? どんな物ですか? えっ? 若い女性? はっはっ、もちろん、私が今すぐ行って参ります! 」 ・・・
[B] 本作の主な登場人物 (書籍によっては、登場人物の名前に多少の違いがあることもあります) (採番②と③と④と⑤を分類上必要なら使う)
以下、おおまかな登場シーン別くらいにグループ分(番号もランダムです)しておりますが、あまり深い意味はありません。
(本作の主な舞台) エジプトの考古学上の発掘現場や高級ホテル、イギリスのヘレンの父親の「先祖(代々)の屋敷、セヴァーン・ホール」周辺など)
(セヴァーン伯爵の考古学・発掘関係者)
②-1 セヴァーン伯爵領4代の当主 : セヴァーン伯(Lord Severn) ジョン・ローリン
②-2 エジプト政府から贈呈された『青銅ランプ』を、イギリスのヘレンの父親の「先祖(代々)の屋敷、セヴァーン・ホール」へ持ち帰った、セヴァーン伯娘で若き考古学者 : ヘレン・ローリン(Lady Helen Loring)
②-3 セヴァーン家の執事 : ベンスン
②-4 同、セヴァーン家の家政婦 : エリザベス・ポンフレット夫人
②-4-8 料理番の女 : ハンディサイド夫人
②-4-9 太った小間使い : エモリ
②-4-10 雑役婦(事件当日は休暇で不在) : アニー
②-4-29 運転手 : リューイス
②-4-30 同、表門の門番 : バート・レナード
②-10 セヴァーン伯の助手で、ヘレンに求婚中(35才) : サンディ・ロバートスン
②-11 ヘレンの友人、実はサンディを愛する女性 : オードリー・ヴェーン
②-12 同、ヘレンの友人でひそかにヘレンを愛する青年弁護士 : クリストファー(キット)・ファレル
ロンドンの周辺のセヴァーン伯の屋敷とのやりとりで出てくる関係者
②-40 ヘレンの電報を執事ベンスンに電話で伝えた郵便局員 : ゴールディン
②-43 その著作が書斎にも残されている、『屋敷の敷地内の秘密の通路や隠れ場所』に関する現代最高の権威者で、かってセヴァーン伯の屋敷も2週間に渡って調査した(が何もなかったらしい) : ホレス・リネル
②-44 ロンドンきっての建築家で、依頼によってセヴァーン伯の屋敷を再調査することになる : ラザフォード
②-45 お寺の近くで骨董店をやっている女。セヴァーン家のある物の修復を頼まれる : ジュリア・マンスフィールド
エジプト周辺の関係者
②-20 エジプトでの遺跡をセヴァーン伯と共同で発掘していた考古学者、さそりに刺される : ジルレー教授
②-21 ジルレー教授を調べた療養所の博士で結果をセヴァーン伯に電話してくる : マクベーン博士
②-22 自分のことを学究(がっきゅう)と言い、自分で古代エジプトの魔法と称するものを使って、いろいろ予言をして生計を立てている、カイロの占い師(預言者) : アリム・ベイ
②-23 エジプトのカイロで、新聞記者たちの前でH・M卿ともめたタクシーの運転手 : アボウ・オワド
アメリカの関係者
②-31 アメリカ随一の預言者&占い師で、LAに古代エジプト博物館を建てて、大きな商館のようにして羽振りの良い骨董蒐集家だが、あやしげな男でセヴァーン伯のエジプトでの今回の発掘物に興味を示して、セヴァーン伯周辺にもあちこちに出現 : リオ・ボーモント
(捜査の関係者 〜 H・M卿の周辺人物に関しては、登場の有無に関わらず記載しております)
④-94 事件担当の警部 : デーヴィス
④-95 ロンドン警視庁(スコットランド・ヤード)の主任警部 : ハンフリー・マスターズ
④-96 マスターズがH・M卿に相談しにいく時に書面で許可を取るロンドン警視庁(スコットランド・ヤード)の副総監 : フォレット
④-97 情報部の入っているビル「ホワイト・ホール」の受付けの人 : カーステア
④-98 情報部の入っているビル「ホワイト・ホール」でのH・M卿の秘書兼電話交換手 : ロリポップ・フォリオット
④-99 たまたまホテルにいた陸軍省情報部部長で名探偵 : H・M(ヘンリー・メリヴェール)卿
[C] 本作について (採番は⑥〜)
⑥-1 原題は「The Curse of the Bronze Lamp」。なお、(1)巻頭には『エラリー・クィーンに対する献辞(題: 『エラリー・クィーンに読ませるために』)』があります。本作はとても仲良しの2人(実際は3人になるでしょうが)がミステリー小説について夜を徹して(詳細は巻末の『解説』参照)話したことで意気投合した結論は「ミステリーの発端は人間消失の謎にまさるものはない」ということから、エラリーのために書いたとされる。また(2)巻末には、『日本推理作家協会第7代理事長』でミステリー小説研究ならびに評論家として有名な中島河太郎氏(なかじま かわたろう)の『解説』があり、カーについての概説と上記のEQとの話や本作についての解説があります。
⑥-2 概して、カーター・ディクスン(Carter Dickson、ジョン・ディクスン・カー)の作風としては、「犯人は誰か?」だけでなく、『どうやってそれを成し遂げたか?』というところが、作品によって顕著な場合があります。本作においては、人間消失が起きます。
⑥-3 「青銅ランプの呪い(The Curse of the Bronze Lamp) Kindle版」、カーター・ディクスン(Carter Dickson)、すなわち、ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr)著 (グーテンベルグ21 長谷川修二訳)。ちなみに、「グーテンベルグ21」はデジタル書店。
[D] H・M(ヘンリー・メリヴェール)卿シリーズ (採番は⑦〜)
⑦-1 ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr)」の人気作品には、いろいろな主人公(探偵役)が登場します。「アンリ・バンコラン(Henri Bencolin)予審判事」、「ギディオン・フェル(Gideon Fell)博士」、「警視総監直属D3課長マーチ大佐(Colonel March)、主に短編で登場」などです。事件が不可能犯罪や密室の場合は、時に「誰がやったか?」よりも「どのようにしてそれらがなされたか?」に重点が置かれる場合があります。
⑦-2 一方、別名義のカーター・ディクスン(Carter Dickson)で発表した作品では、「通称H・Mこと、ヘンリー・メリヴェール卿(Sir Henry Merrivale)」が主に活躍し、その彼が登場する長編第1作目は「プレーグ・コートの殺人(The Plague Court Murders)、別名 : 黒死荘殺人事件」ですが、こちらも人気の主人公です。このHMが主人公の場合も、フェル博士登場と同様に、事件が不可能犯罪や密室の場合は、時に「誰がやったか?」よりも「どのようにしてそれらがなされたか?」に重点が置かれる場合があります。(現在、出版物の検索などでは、いずれもジョン・ディクスン・カー名義で検索できる)。
⑦-3 現在、このブログでは、『フェル博士』の作品の記事が一通り終わりまして、新しく『通称H・Mこと、ヘンリー・メリヴェール卿』シリーズとして、まず順に続けております。その時点で「Kindle (含むUnlimited)」の本が出ていないなどの事情があれば、記事の枠だけ作ってスキップして次の作品に進み、後でKindle版が出てきた場合は、順番は後になりますが、いつか記事にする予定ではいます。別途、その際に新訳本などがあればそちらを読むこともあるかもしれません。
⑦-4 『通称H・Mこと、ヘンリー・メリヴェール卿(出版社によっては多少の表記の違いがある)』の経歴を簡単に書きますと、イギリスのサセックス生まれ。巨体で『内科医といわれるが医師』と『法廷弁護士』の資格を持ちながらも、第一次大戦中は『英国陸軍諜報部』の所属、戦後は情報部の所属となっている。初出は本書『プレーグ・コートの殺人(The Plague Court Murders)』です。
(備忘録) H・M(ヘンリー・メリヴェール)卿(16) (JDCとCDで通算39作目)
A済
ではまた!