おすすめな「読み方」 〜 海外の本格ミステリー小説
[A] 事前準備(1) 人物名と関係を把握する
① 本を買ったら(あるいし注文して届いたら、あるいは電子書籍で読むなら)、その本を読み始める前に準備しましょう。これをしておくと後々楽です。英語圏の人名に慣れている人は別にかまいませんが、どうも人物名がとっつきにくいとおっしゃる方は、基本は国内ミステリー小説と同じだと考えて、まずは、人間関係を把握するところからはじめましょう。
② すでに本を開いた時点で、そこに「登場人物の一覧」などが載っている場合は、それらを自分で「かみくだいて」、A4の白いコピー用紙などに表(リスト)などにしてまとめてしまいます。それも、主人公とその血縁関係者、関係者などをまずうめていきます。
1970年、ニューヨークのオーフロ村 | ||||
ショーン・トロリ | 主人公、大富豪 | 50才 | 金融業 | |
その妻 | ハル | |||
その長男 | アロー | |||
その妻 | シーナ | |||
トロリと敵対する、大富豪一族、スピード | 70才 | |||
その妻 | スロー | IT産業 |
③ 例としては、(a) まずは、[主人公ショーンとか]、その下に妻[ハル]とか、両親、兄弟、親戚と、主人公の周囲の人物をうめていきましょう。それが済んだら、次は(最初にはわからない場合もあります)被害者の名前[ジョージとか]とその周辺人物、その他の人物[ロジャーとか]そして、探偵[シャー]と相棒[ワット]の名前、警視[ピア]や刑事[ダニエル]の名前とかを入れていきます。もし、本の裏表紙にあらすじがあって、そこに「最初の被害者は」と書かれていたら、その名前はわからなくても「職業や男女の別」などで、とりあえず枠だけ作っておきます。
[B] 変化する登場人物 〜 ふえたり、減ったり、真犯人は隠れている!
④小説を読んでいるうちに、登場人物は増えていくのが、普通。その人たちは1回こっきりしか登場しないかもしれませんが、のちのち重要なヒントを与えてくれたり、アリバイを証言したり人かもしれませんので、上の表には余裕のあるページを足すか、あとでいくらでも足せるようにしておくといいです。
⑤ ミステリー小説なので、当然基本的に、[探偵vs真犯人]の構造になっています。そして、たいてい真犯人は生き残った人たちの中に隠れています。
⑥ そこで、本を読み進めるうちに、誰か死んだりしたら生き返ったり確認が間違ってたりしたら、上記のリストから、[確実に死が確認された人のみ]消していきます。ラインマーカーでも2重線でも何でもok。注意が必要なのは、崖から落ちて死体がみつからず、海や湖で遭難して死体がまだ引き上げられていない、頭のない死体とか顔がつぶされた死体とか焼死体とか(うーん、ちょっとこわいので、急いで飛ばし読みしたくなるところ)、こういう「人たち」は、まだ、確実に確認されたとは言いがたいので、違う色のラインマーカーとか消し線ではなくて三角マークとか、疑問符(?)とかつけて残しておきましょう。逆に、こういう「人たち」は有力な隠れた真犯人になり得ます。どうしても生きている人の中で、「この人が真犯人、間違いない!」と思える人がいない時は、こういう人たちがいなかったかリストを見て思い出しましょう。あっさり二重線で消していないか、その周辺をもう一度読んでみましょう。
⑦ 消去法でどうしても消せない人がいたら、どんなに犯人ぽくなくても、その人が犯人である可能性はすてきれないもの。二重丸付きの真犯人候補です。現実の事件ではそうでなくても、小説の事件の中では、「そんな〜!」というのはよくあります。ミステリー作家が読者に「挑戦状」をラスト近くで出す場合は、読者も「ひねったところ」と「落とし穴」と「読んでて違和感のあるところ」をチェックしてみるのも手です。どうして「急にこんなことをこの人は言うのかしら?」と。当時の状況を思いちがいでもしてなければ、嘘をついてよいのは真犯人だけです。
[C] 事前準備(2) その場所の状況はどうなってるのか?
⑧ 小説の舞台となるところは、「湖畔の古城」、「町や村」であったり、架空の都市だったりします。陸の孤島、山の途中の小屋もあります。シリーズもので、事件はずっと村の中で起きるけど、ちがう家や建物(会社や教会も含む)であったりもします。道は坂道なのか、一方通行なのか通行止めの工事があったか? 交通手段は列車か船か車か自転車か? 晴れているのか雨なのか、その時だけ雪が降っていたのか、積もっていたのか? 霧の向こうには何があったのか? 海のど真ん中で起きた事件か? 2つ以上場所がある場合は、その関連性は?
⑨ もし本を開いて、そこに地図があったらうれしいですよね。そこで地図もない場合は、人物と同様にA4の白いコピー用紙などに、地図を作りましょう。特に、あまり広くない範囲であれば、その情景もわかりやすくおすすめです。主人公の家、近くの教会と墓地、道路の反対側の家、よくいく店、交番、祖父の家、山はどちら側、海は? 崖は? 目印となりみんなの仲良しのシンボルの大きな樹木 などなど。読みながら書き込んでいくのが面白いです。
⑩ さらに、使われた凶器とか死因はなんだったか? ピストルかナイフか毒かロープか? そして、一つの事件なのか連続した事件で同じ死因だったか? などなど。
⑪ どうでしょうか? だいたい犯人にだまされるより、作家(小説家)に「やられたっ!」というのが多いパターン。しかし、一度犯人がわかり、どうやって成し遂げ、そのトリックがわかってしまうと、良くて面白い作品ほど再読するのに時間が必要なのもミステリーの特徴。特に映画化やTVドラマ化される時は、原作通りの時もあれば意図的に犯人やトリックを変える場合もありますし、原作がめちゃくちゃ面白いという場合だってあります。
以上